株式会社ブランブルフィールドプレイス
日本の伝統的ないちご畝栽培

伝統的な畝栽培(日本式)完全ガイド

難易度:★★☆☆☆(初級)
難易度 ★★☆☆☆ (初級)
費用目安 約1,000~3,000円
収穫時期 4月〜6月
栽培場所 庭・家庭菜園

日本の伝統が生んだ「畝栽培」

畝(うね)を作っていちごを育てる方法は、日本の農家が何世代にもわたって受け継いできた伝統的な栽培方法です。シンプルでありながら非常に理にかなった技術で、現代でも家庭菜園の定番として多くの方に愛されています。特別な道具や機材は不要で、庭のスペースさえあれば誰でもすぐに始められます。

畝栽培とは?

畝(うね)とは、畑の土を縦長に盛り上げて作る台のことです。畝を作ることで、土が水はけよく排水が良くなり、根が充分に張れる環境が整います。また、畝の高さがある分、春から夏にかけての多雨時でも根腐れを防ぐことができます。

日本のいちご農家は古くから、黒いビニールマルチシートを畝に張る「マルチング(mulching)」という技術を組み合わせることで、雑草を抑え、地温を保ち、泥の跳ね返りによる病気を防いできました。この「畝栽培+マルチング」の組み合わせは、現在でも最もベーシックで確実ないちご栽培の基本として伝えられています。

費用も非常に安く抑えられ(1,000〜3,000円程度)、初めていちごを育てる方にも最適です。土と向き合い、季節の変化を感じながら丁寧に育てるこの方法は、特に庭を持つご高齢の方々に長年愛されてきた、最も日本的ないちご栽培と言えるでしょう。

必要な材料リスト

🌿
いちごの苗(5〜10株) とちおとめ・章姫・あまおう等。秋植え苗(9〜10月)が最適。ホームセンターで入手
🪨
完熟堆肥(たい肥) 牛糞・腐葉土の完熟堆肥。1㎡あたり2〜3Lを土に混ぜ込む。土を豊かにする基本の資材
🧂
苦土石灰(くどせっかい) 土のpHを調整する。1㎡あたり150〜200g。植え付け2〜3週間前に混ぜ込む
🌑
黒マルチシート(黒マルチ) 幅90〜120cm。地温保持・雑草防止・泥はね防止の3つの効果。園芸店で入手
🧪
化成肥料または緩効性肥料 元肥として使用。NPK(窒素・リン酸・カリ)バランスの良い野菜用肥料を選ぶ
🪣
スコップ・クワ 畝を作るための基本道具。小型のスコップと平グワがあると便利
📏
支柱・マルチ押さえ マルチシートを固定するためのUピン(マルチ押さえ)を1本あたり8〜10本用意
💧
液体肥料(追肥用) 開花期から収穫期に使用。ハイポネックスなどを2週間に1回施す
💰 費用目安: 約1,000~3,000円

※苗(5〜10株):500〜1,500円、マルチシート:200〜500円、肥料・石灰:300〜600円。家に道具があればさらに安くなります。

マルチング技術について

マルチングとは?

マルチング(mulching)とは、土の表面をシートや有機物で覆う技術です。日本のいちご栽培では黒いビニールシート(黒マルチ)を使うのが最も一般的です。

黒マルチ
(黒ビニールシート)
地温保持◎
雑草抑制◎
泥はね防止◎
最もポピュラー
シルバーマルチ
(銀色ビニールシート)
害虫忌避◎
光反射で病気防止
夏場の地温上昇抑制
わらマルチ
(稲わら)
昔ながらの方法
通気性良好
有機物として分解
腐葉土マルチ
(落ち葉・腐葉土)
保温保湿効果
分解で土が豊かに
環境にやさしい

家庭菜園では「黒マルチ」が最も手軽で効果的です。特に初めての方は黒マルチから試してみましょう。

栽培手順(ステップごとの解説)

1

栽培場所の選定と準備(8月〜9月初旬)

日当たりの良い南向きで、水はけの良い場所を選びます。1日6時間以上の直射日光が当たることが条件です。なお、いちごの連作は病気が出やすくなるため、過去3年以上いちごや同じナス科・ウリ科の野菜を作っていない場所を選ぶのが理想的です。前作がナスやトマトだった場合も病害リスクが上がるため注意しましょう。

2

土作り・苦土石灰の散布(8月下旬〜9月初旬)

植え付け2〜3週間前に、まず土を深さ25〜30cmほどスコップで掘り起こし、1㎡あたり苦土石灰を150〜200g均一に散布してよく混ぜ込みます。いちごは弱酸性(pH5.5〜6.5)の土を好みます。石灰を混ぜた後は2週間ほど置いてから次の工程に進みます。石灰の入れすぎはアルカリ性になりすぎるので注意しましょう。

苦土石灰の後に肥料を入れる場合は、2週間以上の間隔を空けてください。石灰と窒素肥料を一緒に入れると化学反応でアンモニアが発生し、植物に害を与える場合があります。
3

堆肥と元肥の投入(9月初旬〜中旬)

石灰を入れてから2週間後、今度は完熟堆肥を1㎡あたり2〜3L、さらに緩効性化成肥料(NPK各成分が入ったもの)を袋の指示通りに散布して、深さ20cmまでよく混ぜ込みます。堆肥は土の保水性と通気性を高め、微生物の活動を活発にします。この作業でいちごが育つ豊かな土台が完成します。

4

畝(うね)の成形(9月中旬)

土作りが完了したら、クワやスコップを使って畝を作ります。畝の形状は幅60〜80cm、高さ10〜15cm程度を目安に、土を中央に寄せながら台形に整えます。畝の表面は平らにならし、両サイドは少し傾斜をつけて水が流れやすくします。畝の方向は南北に向けると株全体に均一に日光が当たり効果的です。

畝を作る際は土を「ふんわり」と盛り上げることが大切です。固く押さえてしまうと根が張りにくくなります。土の塊がある場合は細かく砕いておきましょう。
5

黒マルチシートの敷設(9月中旬)

畝ができたら、黒マルチシートを畝全体に被せます。マルチシートを畝の上に広げ、端を折り返して土で押さえるかUピン(マルチ押さえ)で固定します。シートがたるまないよう、ピンと張った状態で固定するのがポイントです。次にシートの上から植え付け位置を確認し、カッターや焼いた棒などで直径10〜15cmの十字の切り込みを入れ、植え穴を開けます。

マルチシートの下に雑草の種がある場合、シート下で発芽して盛り上がることがあります。土作りの際にしっかり耕して雑草を取り除いておくと、後の管理が楽になります。
6

苗の植え付け(9月中旬〜10月中旬)

いちごの苗をマルチの切り込み部分から植え付けます。株間は25〜30cm。植え付け時の最重要ポイントは「クラウン(株元の盛り上がった部分)を地面に出す浅植え」です。クラウンが土に埋まると腐敗し、浅すぎると根が乾燥します。クラウンの下半分が土に入り、上半分が地面に出るくらいの深さが最適です。植え付け後はたっぷりと水を与えます。

7

秋〜冬の管理(10月〜2月)

植え付け後、秋は株が充実する時期です。枯れた葉はこまめに取り除き、病気の予防に努めます。11月以降は気温が下がり株は休眠に入りますが、根は成長を続けています。凍結が心配な場合は株の上に不織布をかぶせると安心です。冬の水やりは土が完全に乾いた時のみ行い、過湿を避けます。この時期は肥料は不要です。

厳寒期(1月〜2月)に株元の土が盛り上がることがあります(霜柱の影響)。これを「根上がり」と言い、根がむき出しになって株が弱ります。見つけたら土を足して根を覆いましょう。
8

春の管理と収穫(3月〜6月)

3月になると株が急に成長を始め、4月には白い花が咲きます。開花時期から液体肥料(ハイポネックス等)を2週間に1回施します。花が咲いたらミツバチなどの昆虫が自然に授粉してくれます。開花から約1ヶ月で実が色づき始め、全体が赤くなったら収穫の合図です。収穫後も花が咲き続けるので、6月頃まで継続して収穫を楽しめます。ランナーが出始めたら、翌年用の子苗を取ることができます。

参考動画:伝統的な畝栽培の実演

実際の畝の作り方・マルチの張り方・苗の植え付け方を動画で確認しましょう。百聞は一見に如かず、ぜひ動画で手順を確認してから作業に取りかかると理解が深まります。

よくある失敗と対策

失敗・症状 原因 対策・解決方法
株が弱る・枯れる(深植え) クラウンを土に埋めすぎた 植え直す(クラウンを地表に出す浅植え)。深植えの株は復活が難しいため早期対処が重要
実に泥がつく・腐る マルチなし・低い畝 黒マルチシートをしっかり張る。畝を10〜15cm以上の高さに整える
うどんこ病(白い粉)が出る 通気不良・多湿 枯れ葉を除去して通気確保。過密植えを避ける。重曹水または専用薬剤で対処
アブラムシの大量発生 春の温暖乾燥期に多発 早期発見が大切。牛乳スプレー・木酢液の希釈液を散布。シルバーマルチへの変更も効果的
ナメクジによる食害 ナメクジが実や花を食べる 夜間にナメクジ取りを実施。株周りに珈琲かすを撒く。市販のナメクジ忌避剤を使用
根上がり(株が浮き上がる) 冬の霜柱による 霜柱で根がむき出しになった株は、土を補充して根を覆う。不織布で予防も有効
実がならない・花が少ない 日照不足・株が弱い 日当たりの良い場所に移植(秋のうちに)。追肥でリン酸多めの肥料を与える

収穫の目安

畝栽培の収穫サイン

  • 実全体が均一に赤く色づいた時(緑や白い部分がなくなったら)
  • ヘタの部分が外側に反り返ってきた時
  • 指でそっと触れて柔らかい弾力がある時
  • 甘酸っぱい香りが漂い始めた時
  • 開花から約30〜40日(気温により変動)
  • 朝の涼しい時間帯が最も糖度が高く収穫に最適

畝栽培のいちごは土のミネラルをたっぷり吸収して育つため、豊かな風味と甘みが楽しめます。完熟直前まで待つことで甘みが最大になりますが、雨の後は傷みやすいので注意しましょう。一粒一粒を丁寧に観察しながら、最高のタイミングで収穫する喜びをぜひ味わってください。

月別管理スケジュール

主な作業 水やり 肥料 注意点
8月 土作り(石灰散布) 苦土石灰 植え付けの準備
9月 堆肥・元肥・畝作り・マルチ敷設・苗植え付け 植え付け後はたっぷり 元肥(緩効性) 植え付け最適月!
10月 活着確認・ランナー除去 週2〜3回 不要 深植えの修正を確認
11月 枯れ葉取り・防寒準備 週1〜2回 不要 株の充実を確認
12月 防寒管理(不織布) 乾燥時のみ 不要 根上がりに注意
1月 休眠期・根上がり確認 乾燥時のみ 不要 霜柱対策
2月 株の確認・枯れ葉除去 週1回 不要 春の準備開始
3月 成長開始・追肥開始 週2〜3回 液肥スタート(月2回) 花芽の確認
4月 開花・授粉(虫任せ) 週3〜4回 液肥(週1回) 花の管理!雨風に注意
5月 収穫最盛期 毎日〜2日に1回 液肥(週1回) 毎日収穫確認!
6月 収穫終盤・ランナー子苗採取 週2〜3回 液肥(月2回) 子苗の採取
7月 夏越し・高温対策 毎日(朝) 不要 遮光ネットの活用

まとめ・土と向き合う喜び

伝統的な畝栽培は、最もシンプルで費用のかからないいちご栽培の方法です。土を耕し、畝を作り、苗を植えて、毎日少しずつ成長を見守る——そのプロセス全体が、日本の農業文化と深く結びついた豊かな体験です。

特別な機材は何も要りません。必要なのは小さな庭と、土を愛する気持ちだけ。秋に植えた小さな苗が、春に大きく育ち真っ赤な実をたわわに付けた時の喜びは、何物にも代えられません。ぜひこの秋、伝統の畝栽培でいちご栽培の第一歩を踏み出してみてください。

毎年秋に畝を作り直し、新しい苗を植えることで土が更新され、より豊かな味わいのいちごが育ちます。ぜひ毎年の秋の楽しみにしてみてください。